ランニングフォーム矯正にも美脚にも最適! 元競歩日本代表・吉澤永一さんが語る「競歩のススメ」
- ikeda749
- 2017年9月14日
- 読了時間: 5分
20km競歩日本代表選手として、2002年アジア選手権金メダル、2003年パリ世界選手権出場と世界を舞台に戦ってきた吉澤永一さん。現役引退後は、競歩で培ったウォーキング技術を元に、子どもから大人まで幅広い年齢層の方にランニング指導をしています。そんな吉澤さんに、競歩の魅力、ランニングに繋がるウォーキングのメリットなどを伺いました。
競歩の技術はオリンピック選手に教えてもらった
陸上部に入ったのは高校からですが、僕の進学した長野県の飯田高校の地域は競歩が盛んなんです。オリンピック選手も2人いて、1人はソウルオリンピック代表の酒井浩文さん、もう一人はバルセロナオリンピック代表の園原健弘さん。園原さんは僕の高校、大学の先輩でもあります。ついでにいえば、ロンドン世界陸上50km競歩代表の荒井広宙選手や20km競歩代表の藤沢勇選手も長野県出身。そんな環境なので「ちょっと競歩やってみろよ」っていうのはごく自然で、高校1年生のときから競歩と長距離走を両立して練習していました。そのうち競歩のほうの成績がよくなってきたので、明治大学に進学してからは競歩1本で。インカレは10000m競歩ですけれど、シニアの大会の主流である20km競歩をメインにやっていました。
ちょうど、酒井さんが現役を引退して地元に戻って来ていたので、いきなりオリンピック選手に競歩を教えてもらえた。すごくいい環境だったと思います。
選手の「歩く」スピードを体感してもらいたい

競歩の練習メニューそのものは、長距離ランナーのそれと変わりません。ランニングでいうところのジョギングと同様、歩き込んでスタミナをつけ、スピードを養うためにインターバルやペース設定をする。場所もトラックだったりロードだったりと同じ。距離もマラソン練習とさほど大きな違いはありません。大きく違うのは、もちろん走るのではなく「歩く」ということで、競歩のルールに基づいて歩くのですが、その習得が最初はけっこう大変でした。
普通に歩くときは後ろ足と前足は両方地面に着いています。ランニングは逆に両足が完全に浮いた状態があるのですが、競歩はその中間の動き。競歩の場合、片足だけが地面についていればいいので、前足を着けるときに後ろ足を離します。そうすることで速く歩けるので、そこを意識しながらトレーニングします。
前足を着くときの接地は踵から入るのですが、ヒザを曲げてはいけないというルールがあるので、ランナーのように太ももの前の筋肉が発達することはありません。後ろ足はぐっと押し出すため、太ももの裏とお尻の筋肉はすごく発達します。そのため、競歩の選手は、パッと正面から見ると細い脚に見えるのですが、横から見ると厚みのある脚をしています。また、腕をガンガン振るので、上半身も発達してきますが、競技の特性上、体幹を使うのでウエスト周りは細く、逆三角形の体型になります。
日本人の歩くスピードは1キロ10〜12分と言われていますが、ある一定ラインを超えると、そこから速く歩けなくなる方がほとんどです。1キロ9分台で歩ける方はランナーであればわりといると思いますが、8分台で歩けたらかなり速い方です。(編集部注:ちなみに現在20km競歩世界記録保持者は日本の鈴木雄介選手で1時間16分36秒。これは1キロ3分50秒、フルマラソン2時間41分45秒のスピード)。
リオ五輪やロンドン世界陸上での日本代表選手の活躍もあり、テレビ等を通して競歩を見ていただく機会は増えました。しかし、競歩の大会は地方で行なわれることが多く、実際に目の前で選手が歩いている姿を見ることはなかなかできません。僕も現役引退してしばらく経つので、ウォーキングの指導は出来ても「速さ」を見せるのは難しくなっています。競歩選手の「速さ」をもっと知っていただくために、現役選手と一緒にできるイベントなど、今後は考えていきたいと思っています。
ウォーキングが市民ランナーにもオススメの理由

競歩やウォーキングは一般の市民ランナーにもオススメです。競歩は競技の特性上、フォーム重視で、それを意識してトレーニングをしないと意味がありません。一般に、競歩選手はフォームをキープする能力は長けていると思います。いいフォームで歩けると、腰の位置を高くキープできるので、ランニングにも効果的です。また、競歩の体重移動は上下動がないので、推進力を前に使えるようになるし、足の回転(ピッチ)も速くなると思います。
スピードを出して走っていると、自分の動きがどうなっているのかコントロールしにくいのですが、歩く速度であれば自分の姿勢も意識できます。普段の練習でもジョギングをたまにウォーキングに替えてみたり、ウォーミングアップに取り入れてみたり。これから走り始めようかという人も、いきなり走り始めるよりウォーキングからのほうがケガのリスクもなく安心です。
競歩でフォームをきちっと学ぶと、日常的に歩く動作もキレイになります。特別に練習時間が作れなくても、歩く機会は日常生活にたくさんあり、そこでトレーニングを兼ねることができます。ケガをしてリハビリ中の方やランニングフォームの矯正に取り組んでいる方はもちろん、ダイエットや美脚など身体作りに興味のある方にもオススメです。
蹴りクセをつけないためキャタピランは緩めに

競歩のシューズは、ランニングシューズと同じです。踵からぐっと体重を乗せていくため、クッションが強いと沈み込むので、基本薄いソールのシューズを履きます。
キャタピランは発売と同時くらいから使っています。第一生命女子陸上部監督・山下佐知子さんの旦那様で元マネージャーの吉原智司さんからサンプルをいただいたのがきっかけです。キャタピランにするとシューズが履きやすくなるのが一番の魅力。すぽんと履けて、すぽんと脱げるのがいいです。どのシューズにもフィットするし、どんな色の靴にも合うよう様々なカラーがあるのもいいですね。
リラックスして履きたいので、キャタピランは緩めに通すようにしています。特にランニング時は、足首を返すキックの動きを出来るだけ抑えたいので、紐は緩めで地面を蹴らずに走ることを意識しています。紐が緩い状態で地面を蹴ると靴が脱げてしまいます。そうした蹴り癖を防ぐためにも、緩くても脱げにくいキャタピランは重宝しています。
プロフィール:吉澤永一(よしざわえいいち)
1980年生まれ。長野県下伊那郡出身。飯田高等学校→明治大学→長谷川体育施設→西田ランニングクラブ(NRC)。高校時代から競歩を始め、明治大学時代は関東インカレ10000m競歩3連覇、日本インカレ10000m競歩2連覇を達成。2002年アジア選手権20km競歩日本代表、W杯競歩20km競歩日本代表、2003年パリ世界選手権20km競歩日本代表。2005年現役引退。現在は、西田隆維さん(2001年エドモントン世界陸上マラソン日本代表)の主催する西田ランニングクラブ(NRC)のコーチとして市民ランナー向けのランニングクリニックやマラソン大会を企画、運営。母校・明治大学競走部のコーチも務める。
Комментарии