20km競歩日本代表選手として、2002年アジア選手権金メダル、2003年パリ世界選手権出場と世界を舞台に戦ってきた吉澤永一さん。現役引退後は、競歩で培ったウォーキング技術を元に、子どもから大人まで幅広い年齢層の方にランニング指導をしています。そんな吉澤さんに、競歩の魅力、ランニングに繋がるウォーキングのメリットなどを伺いました。

競歩の技術はオリンピック選手に教えてもらった

前足を着くときの接地は踵から入るのですが、ヒザを曲げてはいけないというルールがあるので、ランナーのように太ももの前の筋肉が発達することはありません。後ろ足はぐっと押し出すため、太ももの裏とお尻の筋肉はすごく発達します。そのため、競歩の選手は、パッと正面から見ると細い脚に見えるのですが、横から見ると厚みのある脚をしています。また、腕をガンガン振るので、上半身も発達してきますが、競技の特性上、体幹を使うのでウエスト周りは細く、逆三角形の体型になります。

日本人の歩くスピードは1キロ10〜12分と言われていますが、ある一定ラインを超えると、そこから速く歩けなくなる方がほとんどです。1キロ9分台で歩ける方はランナーであればわりといると思いますが、8分台で歩けたらかなり速い方です。(編集部注:ちなみに現在20km競歩世界記録保持者は日本の鈴木雄介選手で1時間16分36秒。これは1キロ3分50秒、フルマラソン2時間41分45秒のスピード)。

リオ五輪やロンドン世界陸上での日本代表選手の活躍もあり、テレビ等を通して競歩を見ていただく機会は増えました。しかし、競歩の大会は地方で行なわれることが多く、実際に目の前で選手が歩いている姿を見ることはなかなかできません。僕も現役引退してしばらく経つので、ウォーキングの指導は出来ても「速さ」を見せるのは難しくなっています。競歩選手の「速さ」をもっと知っていただくために、現役選手と一緒にできるイベントなど、今後は考えていきたいと思っています。

ウォーキングが市民ランナーにもオススメの理由

競歩でフォームをきちっと学ぶと、日常的に歩く動作もキレイになります。特別に練習時間が作れなくても、歩く機会は日常生活にたくさんあり、そこでトレーニングを兼ねることができます。ケガをしてリハビリ中の方やランニングフォームの矯正に取り組んでいる方はもちろん、ダイエットや美脚など身体作りに興味のある方にもオススメです。

蹴りクセをつけないためキャタピランは緩めに

リラックスして履きたいので、キャタピランは緩めに通すようにしています。特にランニング時は、足首を返すキックの動きを出来るだけ抑えたいので、紐は緩めで地面を蹴らずに走ることを意識しています。紐が緩い状態で地面を蹴ると靴が脱げてしまいます。そうした蹴り癖を防ぐためにも、緩くても脱げにくいキャタピランは重宝しています。

プロフィール:吉澤永一(よしざわえいいち)

1980年生まれ。長野県下伊那郡出身。飯田高等学校→明治大学→長谷川体育施設→西田ランニングクラブ(NRC)。高校時代から競歩を始め、明治大学時代は関東インカレ10000m競歩3連覇、日本インカレ10000m競歩2連覇を達成。2002年アジア選手権20km競歩日本代表、W杯競歩20km競歩日本代表、2003年パリ世界選手権20km競歩日本代表。2005年現役引退。現在は、西田隆維さん(2001年エドモントン世界陸上マラソン日本代表)の主催する西田ランニングクラブ(NRC)のコーチとして市民ランナー向けのランニングクリニックやマラソン大会を企画、運営。母校・明治大学競走部のコーチも務める。

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